純次と、直樹と、重里と。
高田純次さんと浦沢直樹さんが毎週日曜に放送している
文化放送のラジオ番組「純次と直樹」に
糸井重里がゲストで招かれ、
特別番組としてオンエアされました。
その番組の収録時間は余裕の2時間半超え!
3人の短い言葉のやりとりに潜む
絶妙な味わい深さをあらためて楽しんでいただけるように
「ほぼ日」のテキストにして、
みなさまにお届けいたします。
ラストの高田さんのノーパンの話は、
同席したスタッフは今も忘れることはできません。
第1回 コピーライターになりたい人へ、アドバイスをするとしたら。
写真
高田
純次と、
浦沢
直樹と、
糸井
糸井重里。
高田
ということでね、
まずは今日、どうしてこの3人が集まったのかを
説明したいところですけれども。
糸井
では、説明上手な浦沢さんからお願いします。
浦沢
はい(笑)。
高田さんがもともと歌手の前川清さんの
ファンなんですよね? 
その中でも『雪列車』がカラオケの十八番で。
高田
そう、作詞・糸井重里、作曲・坂本龍一の。
浦沢
名曲です。
高田
「匂うように 笑うように 雪が降る」
「無邪気色の ひざかけを かけて眠る」
こんな歌詞がどうやって生まれてきたのか、
知りたいじゃないですか。
写真
浦沢
ふだんやってる「純次と直樹」の番組で
前川さんの歌について、
そんなふうに大騒ぎした回があったんです。
そのときの放送の宣伝ツイートで
僕が前川清さんの似顔絵を描いたら、
なんとご本人まで届いちゃって。
糸井
僕はちょうどそのとき、
前川清さんの50周年コンサート
企画を進行していたんです。
「コンサートにお呼びしていいでしょうか」と言ったら
おふたりとも「行くよ」と言ってくれて。
高田
呼ばれてうれしかったです。
浦沢
でも高田さん、歌を『雪列車』しか覚えてないから、
コンサートが終わったあとに
「今日は『長崎は今日も雨だった』やんなかったね」
ってこっそり言ったけど、
思いっきり、いちばんはじめにやってましたよ(笑)。
写真
高田
木は見てるんだけど、
森が見えなかったんだなぁ。
僕はいつもそう。
浦沢・
糸井
(笑)

高田
糸井さんの肩書は何になるんですか?
作詞家‥‥ではないですよね?
糸井
今はもう、「ほぼ日の代表」です。
高田
消去法でいけば、作曲家じゃないですよね。
糸井
(笑)、作曲はしていませんね。
高田
俳優?
糸井
俳優は、やって失敗しました。
高田
マジシャンではありませんよね?
糸井
マジックは(笑)、
したことがないかもしれません。
写真
高田
画家はやられたことあるでしょう?
糸井
絵を描かなかったわけではないけど、
5000円ぐらいしか稼いでないです。
高田
糸井さんはコピーライターもやられていますが、
どういうセオリーでいけば
コピーライターとして生きていけるんですか。
糸井
ああ、急な質問ですねぇ(笑)。
高田
ヒット作があればいいのかしら。
でもなかなかヒット作は出るものじゃないでしょう?
糸井
そうですね、うん。
浦沢
コピーライターになるには、
いくつぐらい面白いこと言えばいいんだろう。
糸井
「コピーライターとして売れる」という概念は
僕がコピーライターを始めた頃はなかったんですよ。
資生堂の宣伝部出身の土屋耕一さんとか、
キユーピーマヨネーズのコピーを書いていた
秋山晶さんのように、
同業者が「いいなあ!」という人はいたんですが。
高田
僕ら素人からすると、コピーというと、
面白いことやインパクトのあることを
言えばいいのかな、なんて思うけど、
もちろん違うんですよね。
糸井
そういうことであればもう、
お笑いの人のほうが得意です。
お笑いの人が出す「いい言葉」の分量と質は、
コピーライターよりずっと上だと思いますよ。
高田
そうかなあ。
俺あんまりお笑いやったことないから。
浦沢・
糸井
(笑)

写真
高田
でもそれとはまたなにか違うんですよね?
糸井
うん、やっぱり違うんです。
コピーってつまり、
「どういうふうに伝えていくか」とか
「どう売るか」ということを
まずは根っこに持ったうえで、
「どの言葉を前に出すか」
という順序で考えるものですから。
高田
だから引き出しを持ってないといけない
ということなんでしょうね。
じゃあ、コピーライターを目指す人がいたら、
糸井さんはどういうアドバイスをしますか?
糸井
「自分がその商品の消費者である」ということが
前提になってないといけないですね。
「こうやって喜ばしてやれ」という部分を磨くよりは、
「どう自分が嬉しいんだろう?」という
喜びのほうを覚えておいたほうがいい。
ほかの仕事も同じだと思いますけど。
浦沢
僕も漫画を描いているときは、
自分が面白いと思ったことは
人も面白がるという、
根拠のない確信のようなものがあります。
糸井
はい、まさに同じだと思います。
高田
ああ、だから女の子の絵もきれいに描けるんだ。
浦沢
(笑)自分が見たいんです、まず。
最初の客は自分ですからね。
写真
高田
そうだよねえ。
(つづく)
2018-12-11-TUE